一昔前には、その流通過程にはチャイニーズマフィアが深く関与していたために
日本から香港に進出した量販店では扱うことが出来ないという話を、現地で働く
日系量販店の人から聞いたことがあります。

中国に返還されて、政府当局が関与するようになっているので、今では暗黒街の
影響力が行使されるようなことはなく(少なくとも表向きでは)日本の現地法人
でも扱うことは出来るようになっているようですが、そもそも特定の商品を供給
する時点で裏社会が関わるほどの利益があるという時点で、味覚の点で魅力的な
素材であるわけで、上海ガニが珍重される理由もそこにあるわけです。
富裕層のお楽しみとして、飛行機に乗って香港や広州、上海まで上海ガニを食べ
に行く人もいるみたいですが、知名度がある商品ですからデパートや中華食材店
ネット通販で比較的簡単に手に入るようになって来ているので、一匹2,000円程
で上海ガニを味わうことは出来る環境は整備されてきています。
以前は上海ガニは、あまり捕れない希少食材として珍味扱いで高級食材でしたが
養殖事業の本格化で30年前と比べて単価は下がってきています。
今年は暑さで上海ガニが大量死したとか、蘇州の高級ブランドの「陽澄湖産」が
台風の直撃を受けて養殖池が破壊されてカニが集団で逃げたという事件もあって
上海ガニの価格は高騰することが予想されていましたが、深刻な中国の経済状況
の悪化に伴い、上海ガニの需要が低下したために価格は下がっています。
中国一きれいに澄んだ湖と言われている陽澄湖で養殖した上海ガニは、最高級の
ブランドとして知られていますが、周囲に多くのゴルフ場が開設された関係から
グリーン(芝生)の手入れに使用された農薬のほとんどが湖に流入して、湖底に
集積しているという危険性が指摘されていることもあり、実際に上海在住者の間
では、この湖で獲れる水産物を敬遠している人もいるようです。
ちなみに、上海ガニの本名はチュウゴクモクズガニです。
チュウゴクと名乗るからには、当然その仲間が日本にいるわけで単にモクズガニ
と呼ばれている仲間がいて、小さめのカニなので、あまり食用として販売される
ことはありませんが、実はこのカニも味噌汁の材料にしたり、蒸したり茹でたり
して食べると、とても美味しいカニで鮮度の点でも上海ガニに負けていません。
チュウゴクモクズガニとモクズガニは近縁ですが、帰化生物が日本国内で繁殖し
固有種が絶滅することを防ぐために、基本的に日本で利用するために輸入される
チュウゴクモクズガニは生きた状態での移動は禁じられています。
法律を守らない不届き者が生きたチュウゴクモクズガニを流通させているという
問題は指摘されていますが、完全に一掃はされていないみたいで日本の固有種を
守るという意味では大きな問題ですが、一般市民が騒いだところで影響力は皆無
なので、ここではあえて言及はしません。
それはともかく、日本に棲んでいるモクズガニはカワガニとかズガニ、ツガニと
ないう感じでいろいろな呼び名があって、高知の四万十川産のモクズガニは有名
なブランド商品として知られています。
価格的には上海ガニよりも高くなっていたりしますが、農薬汚染とか養殖場での
抗生物質の過剰投与の影響はありませんので安心して食べられるかと思います。
ただ、肝臓ジストマなど、天然ならではの寄生虫病のリスクがあるので、カニを
切る際に飛び散った体液が口に入らないように注意すること、完全に火を通して
食べること、まな板は使用後に熱湯消毒をすること、以上の点に注意することは
重要ですから確実に行なうようにしてください。
上海ガニの話からモクズガニに飛びましたが、農薬汚染とか抗生物質の過剰投与
などの悪い噂の多い上海ガニよりも、モクズガニを食べた方が良いと思いますと
いうのが本音の部分だったりします。
怖いですね。日本のモクズガニは知ってますが食べたことは無いです。
コメントありがとうございます。
日本の河川に生息しているのがモクズガニで、いわゆる上海ガニと
呼ばれているのは、以前はシナモクズガニという名前でしたが、語彙の
問題でチュウゴクモクズガニに名前が変わりました。
一部の地域で、チュウゴクモクズガニの養殖をしていたと思いますが
持ち出して日本の河川に放したりしたら、固有のモクズガニと交雑して
固有種が絶滅する危惧があるため、養殖事業は中止になったような話も
聞いたことがあります。未確認なので現状は不明です。
コメントありがとうございます。
上海ガニは基本的に正式ルートで輸入されているものしかないはずなので
本来の趣旨からすれば、抗生物質や農薬などの危険な薬品は使用されては
いないはずですが、中国の国内で問題になっているぐらいなので、絶対に
安全という保障はないように思います。
日本のモクズガニは、割りときれいな川に棲んでいるので農薬の心配は
あまりないと思いますし、養殖ではないので過密化した環境で抗生物質
で病気を防ぐ必要もないので、薬品汚染のリスクは低いと思います。
ただ、ウェステルマン肺吸虫という寄生虫の宿主になっている確率は
高いので生食は絶対ダメですし、切ったり潰したり(味噌汁にする際は
まな板の上で潰すことが多いです)する時に体液に触れることで感染
する場合があるので注意が必要です。
生のモクズガニや上海ガニを、老酒漬けにして食べさせるところがある
みたいですが、肺吸虫はアルコールぐらいでは死にませんから、生食は
絶対に避けるべき食べ方です。
コメントありがとうございます。
カニ味噌に抵抗のない人は美味しいと言いますね。
見た目でカニ味噌に抵抗を感じる人はダメだと思います。
カニ味噌をカニの脳だと思っている人もいるみたいですが、カニ味噌は
カニの肝臓と膵臓の役目を果たす中腸線という内臓器官なので、脳みそ
ではありませんが、美しい形状ではないので仕方ないですね。
中腸線は肝臓の機能を果たしていますから、稀に発生する貝類の貝毒は
この中腸線の部分に溜まっていますから、もしも薬品で汚染されている
上海ガニだとしたらカニ味噌が危ないということになります。
ただ、上海ガニが美味しいと言われるのはカニ味噌がメインですね。
相場と比べて、安い上海ガニがあったら要注意かも知れません。